2009.06.18 | イベント活動
対テロ戦の行方:オバマ新戦略と日本の役割
伊勢﨑賢治東京外国語大学教授が2009年6月18日世界連邦東京都連合会総会にて講演を行った。
要旨は以下の通りである。
今日のテーマは、対テロ戦である。日本から何千キロも離れたアフガニスタンで行われているアメリカの対テロ戦略と、そこで日本が果たした役割について述べる。
アメリカの個別的自衛権の法律的な根拠となるものが、アルカイダとのテロ戦、OEF(Operation Enduring Freedom:不朽の自由作戦)である。これは、現在はアメリカを中心とした軍事同盟であるNATOが統括している。
アメリカにとっては、最初は個別的自衛権である。NATOにとっては、これはNATO条約第5条における集団的自衛権の行使である。個別的自衛権と集団的自衛権の行使は、自然発生的な権利として国連憲章に認めてある。日本は小泉政権の2001年11月にOEFの海上作戦に参加している。海上作戦にしろ、法的な根拠はまるっきり一緒である。
NATO条約の集団的自衛権、これに自衛隊を派遣した。はたから見ると、日本はまったく同盟関係にないNATOの自衛戦に参加していることになる。関係のない組織の自衛戦にわざわざでかけていくなんて、無茶苦茶である。
ご存知のように、現在の内閣の解釈では、憲法9条のもとでは集団的自衛権の行使はできないことになっている。しかし、これはNATOにとっては集団的自衛権の行使である。なのに、それに参加する日本は、そうではないと主張している。
なぜかというと、『不朽の自由作戦』は、対テロ作戦だからである。テロリスト相手ということは、"国"ではない。よって、宣戦布告できず、戦争ではありえないというわけである。海賊は国ではないから、と同じ理屈だ。しかしこれはおかしい。これでは対外的には説明できない。まず一つは、何の関係もない軍事同盟の作戦に参加しているという点。二つ目に、軍事作戦を行っているNATOが集団的自衛権の行使だと言っているのに、我々日本にとっては集団的自衛権の行使ではないと言い張って自衛隊を送っている点。二重の意味で、間違っている。
では、ISAF(国連治安支援部隊)のほうに自衛隊を送れるのかといえば、これは送れないと思う。国連が承認する軍事作戦には二つある。一つは国連が承認し、国連が指揮をとるもの、もう一つは国連が承認しても国連は指揮をとらないもの。このISAFというのは、国連が承認しても国連は指揮をとっていない。便宜上、現場ではNATOが指揮をしている。
日本は、NATOと軍事的な関係はない。多国籍軍に部隊を出すということは、通常は指揮権を譲渡するということである。今までも、PKOに対して、日本は派遣を行ってきたが、防衛省がこれに対して指揮権を握っているのかといえば、そんなことはありえない。そんなことをしたら、軍事作戦そのものが成り立たないものとなってしまう。
こうして考えると、果たしてNATOに指揮権を譲渡できるのか。その法的な根拠はまったくない。ただ、国連PKOであれば、できるかもしれない。
我々は国連に加盟しているから、憲法98条第2項の精神で、国連憲章は我々にとって国際条約である。加盟関係にある国連に対してであれば、指揮権をゆだねることができるかもしれないが、今回はそうではない。
現状では自衛隊はアフガンには送れない。どんな場合でも送れないという議論であるべきである。
カルザイ大統領は、今年8月の選挙で、再選される可能性が非常に高い。ちょうど4年ぐらい前から、カルザイはタリバン穏健派の人たちと対話をはじめた。しかし、アメリカにとって、自らの傀儡政権であるカルザイ政権と敵が和解してしまうことは好ましくない。戦争の根本的な根拠が失われてしまうからだ。そういう難しさを孕みながらも和解は続いている。アメリカはこのところ、カルザイ政権とタリバンとの和解をコーディネイトするようなことを言っているが、タリバンからみたら、アフガン内部の敵なんてどうでもいい。彼らの敵はアメリカである。紛争の当事者が自らの戦争の調停はできない。
矛盾があるようだけれども、日本には潜在能力はある。日本は、仲介する国に「警戒感を与えない」希有な国である。軍事力で圧力を与えない国なのである。これに期待している。
最後に一言。やっぱり自衛隊の出し方はおかしい。アフガニスタンでもおかしかったのだが、ソマリアにきてもっとおかしくなった。海賊法において、武器使用基準を他国の監査に、あるいは他国の部隊を警護することに使うことは当たり前である。
今、一番いけないのは、日本人を守るための、日本の財産を守るために行っている派兵である。自国の財産を守るための介入で、戦争を引き起こすわけにはいかない。9条に抵触し違憲となるからだ。憲法の発生起源であるspirits、信念を曲げてしまっていいのか。
自衛隊を出してしまったら、他国の部隊を守るのは当たり前である。繰り返すが、日本の財産は守れない。もしくは、軍事力以外のほかの方法で守る。それが我々の信念だったはずなのに、どんどんおかしくなっている。もちろん、我々は自衛隊について延々と議論している。しかし、日本にとっては大問題でも対外的にみたらどうってことない。しかし、なし崩しに違憲度が高い海外派兵がなされているようで、僕は非常に憂えている。
講師 伊勢﨑賢治氏
1957年東京生まれ。東ティモール、シエラレオネ、アフガニスタンで紛争処理を指揮。国連平和維持活動の現場から、憲法9条に基づいた日本の国際貢献を提言する。
HIKESHI(マエキタ伊勢崎研究室)