2009.09.01 | その他
国際連帯税の理念と新たな課題
国際連帯税を推進する市民の会(アシスト)共同代表 田中 徹二
国際連帯税を最初に提唱したのは、2005年1月ダボス会議でのフランス大統領(当時)のジャック・シラク氏であった。内容は、ミレニアム開発目標 (MDGs:Millennium Development Goals)達成のための資金につき、ODAの増額とともに、それに追加して「国際的な税・課徴金といった新しい資金源」を創り出そうというものである。
MDGsとは、2000年に開催された国連ミレニアム総会での世界の貧困解消を謳う「ミレニアム宣言」にもとづき、2015年までに絶対的貧困層(1日1ドル以下の所得者)を半減にするなどの数値目標を掲げたものである。問題はMDGs達成のための資金であり、当時ODAにプラスして年間500億ドルの追加資金が必要とされた。続いて2002年に国連「開発資金に関する国際会議」(モンテレー会議)が開催され、開発資金調達の議論が行われた。そこでの結論はODAの国際目標である対GNI (国民総所得)比0.7%増に向け努力する、というあいまいな内容であったが、この会合で伝統的な開発資金源であるODAとは別の資金源である「革新的資金メカニズム(Innovative Financing Mechanism:IFM)」についても議論された。
このIFMに注目したのが、英国とフランスで、前者は国際金融ファシリティ(International Finance Facility: IFF)を、後者は国際連帯税をそれぞれ提案することになる。IFFとは市場で政府保証付きの債券を発行し資金を調達するという手法である。
国際連帯税(この呼称は多分にフランス的である)の中心理念は先のシラク大統領も言うように「国際課税(グローバル・タックス)」という手法である。なぜグローバル・タックスなのか。第一に、世界の貧困問題やエイズ等の感染症問題への対処は国境を越えたグローバルな取り組みが必要であり、そのための資金もグローバルな拠出(国際公共財)が必要であるからである。第二に、その資金源は安定的で予測可能で、一定規模の資金量を生み出すものでなければならない。この二者を満足させるものは、任意の、ボランティア的な資金源ではなく、国際的に課税するグローバル・タックスがもっともふさわしいと言える。
グローバル・タックスとしては、法人税や所得税のように、社会的アクターに国際連帯税(国際公共財拠出金)として直接税を課することが最適・最善であるが、そもそも徴税主体となる世界政府が存在しないことから不可能である。そこで、"ヒト・モノ・カネの国境を越えた活動が飛躍的に活性化するのがグローバル化経済社会であるにもかかわらず、そうした活動には基本的に課税されていない"という現状に着目し、それに税を課すことが考えられる。なかでもグローバル化により最も利益を受けているアクターの活動に課税することが理にかなっているであろう。とくに、先に述べた国連ミレニアム宣言においては、「グローバル化の影におかれている途上国等への開発支援」が謳われており、グローバルな再分配機能がMDGs達成のためには不可欠である。つまり、グローバル化の光の部分から影の部分への再分配である。
以上のことから、国境を越えたグローバル化活動で受益しているアクター、つまり多国籍企業、なかでも金融・通信・航空産業等の活動への国際連帯税がグローバル・タックスとして期待されるであろう。
もとよりグローバルな課題は、世界的な貧困問題等だけではなく、すでに深刻な問題として顕在化している気候変動(地球温暖化)問題がある。とくに、途上国支援のための「大規模資金メカニズム」(以下、気候変動資金メカニズム)が京都議定書後の次期枠組み交渉における重要課題のひとつとなっている。このメカニズムは途上国の適応策(気候変動の結果もたらされる被害への対応策)や緩和策(温室効果ガス排出を減少させる策)等に使用されるものであり、そのために必要な資金調達について国際税方式、つまり国際連帯税方式での提案が行われている。国際連帯税はこれまでのMDGs達成のための資金メカニズムという範疇を超えて、気候変動関係の資金メカニズムとしても脚光を浴びることになった。
もうひとつ国際連帯税が注目されるグローバルな課題が急速に浮上してきている。それは、今日の国際的な金融危機と世界同時不況をもたらした「投機マネーを軸とした金融資本主義(カジノ資本主義)」の規制のための政策手段としての国際連帯税である。もとより、投機マネーの規制策は、国際通貨取引税(トービン税)として知られており、こちらの方がグローバル・タックス構想としては先輩であるが、今日、国際連帯税のひとつとして規定してよいであろう。
※ 世界連邦運動協会はアシスト事務局運営にも参加している。